すめし

早くガンダーラに行きたい。(成人済)

私だって爽子になりたかった

(漫画のネタバレを含みます)

令和を代表する漫画、平成を代表する漫画、と時代をくくって漫画を評価するなんてセンスがないのかもしれない。でも平成のあの頃だったから描けた漫画だってたぶんあって、君に届けもそうだと思う。

君に届けは学生の頃に読んでいた。黒沼爽子という周りからは暗いと思われて避けられているけど、本当は真面目で優しくて芯があってちゃんとやりたいことはやる、そんな、夢みたいな性格の主人公と友人とクラスメイトの青春物語、それが君に届け

この黒沼爽子という人物はとにかく素直で優しい。人に気持ちを伝えるのが少し下手かもしれないけれど、(特に序盤)とにかく純粋で素直で真っ直ぐな人間。結局、素直で真っ直ぐなところは、恋を知っても嫉妬を知っても人付き合いが増えても変わらなかった。

私がこの漫画で一番好きなシーンは2巻にある。爽子に高校生になってはじめての友人ができる。その友人であるあやねちゃんと千鶴と行き違って、仲直りするシーン。私は号泣してしまった。友達に対して「好きよりも もっと大好き」って言える心を黒沼爽子は持っていた。あやねちゃんと千鶴はそれを受け入れる心を持っていた。あまりにも良い友情……

一番好きなシーンは2巻と書いたが、君に届けは全30巻ある。でも、もし2巻のシーンが好きだけど、途中で読むのをやめてしまった人がいたら、ぜひ最後まで読みきってほしい。2巻のあのシーンはやはり大切だった。

私がこの漫画を読みきったのは大人(社会人)になってからだった。読みきった直後、私は泣きながら、「私だって爽子になりたかった」と強く思った。本気でそう思った。読み終わって、なんでか情けなさややるせなさ、物語の優しさ、この漫画が終わってしまったこと、いろんなことを感じてはいたけど、本当に強く思ったのはそれだった。

最初にも書いたように黒沼爽子は素直で優しい。そしてとにかく両親を大切にして、これからも大切にしようとしている。ライバルのことも許し、友人のことも大切にし、クラスメイトにも優しい。恋人にも真摯に向き合っている。本当に優しく、素直な子だ。

私だってそうなりたかったと泣いた私は、爽子にはなれないことをもうわかってた。

爽子はいいな~って羨んだり、他の登場人物を好きって言ったり、そうやって物語と自分を地続きのように感じられたころに読みきっていたらそうは思わなかったかもしれない。

物語は読む時期によって感じかたが違うから、出会ってすぐ読んだ方がきっといい。だって今より先にもう一度、読み返すことはできる。もしかしたら10年後、君に届けを読んでみたら全然違う感想を抱くかもしれない。今と同じかもしれない。

こんなに君に届けの話をしてるのに、くるみちゃんことも龍のことも話してない。とにかくこの二人が好きだったということだけ書いて残しておく。この二人のこともどこかで記事にしたい。

少女漫画の主人公になりたい、なんて大人になっても思うと思わなかった。もう少しちゃんとした大人になりたかった。仕方ないね。